山からすっかり食べ物(山菓)が無くなってしまったが、立派な梵志には山にいつづけてもらいたい――と、願った獣たちのひとりで、 食べ物として自らの身を捧げようと、火に飛び込んだ兎[うさぎ]。
その徳のある行動のためか、兎の体は火に燃えることはなく、これにこころを動かされた神仏によって梵志と獣たちはまもられ、共に山で暮らしつづけました。
兎王はその後、釈迦として生まれたとされます。
☆ 莱莉垣桜文 附註
『六度集経』などで書かれるはなしに登場する兎。兎は複数の獣たちのうちの1匹で、『一切智光明仙人慈心因縁不食肉経』などでの「とおう」、
『雑宝蔵経』などでの「じと」とは異なった展開のもの。
ほかに山にいた獣たちには「こ」(きつね)、「だつ」(かわうそ)、「こう」(さる)がおり、かれらもそれぞれ捧げ物を持って来ました。
和漢百魅缶│2023.01.11
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