やくしん 厄神

やくしん(厄神)

一切の病気をつかさどってる存在。どんなやまいでも治すことのできる方法を記しているひみつの巻物を所持してます。

永禄のころ、甲府にいた木口道庵という名医はこの厄神からその巻物を授かったので、とても腕がよかったが、戦国の動乱でその巻物も失われちゃったヨ、というおはなしが『古今百物語』にあります。

☆ 莱莉垣桜文 附註
『古今百物語』(拾遺おとぎ)曰
「汝我をおそるる事なかれ我は是一切の厄神なり我類[たぐひ]世間にわたってもろもろの病をさづけて人をなやます」
「邪神はいづちともなくうせぬそれよりいよいよ道庵いじゅつ秀[ひゐで]しが程なくうちつづきたる世の乱[みだれ]にその行所を知らず」

写本『土佐化物絵本』にある「しらがやまのやくじん」は文の上での表現までそっくりであることから同一素材の書き替えであることもうかがえます。

妖怪を描いた絵巻物のなかには「やくしん」というものもあり、その呼び名の根本はこのような版本にもうかがえるようです。

和漢百魅缶│2015.08.20
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