芸州山県郡の大朝などにつたわるもの。むかし、お姫様が機[はた]を織ってると「ちぃっとでもいいけぇ姿を見せてくれ」と声をかけてきつづけたという若い男。あまりにも「見せてくれ」を言いつづけてくるのでお姫様がほんのちょっぴり障子[しょうじ]をあけてあげると、「きれいな姫さんじゃ、もちっと、もちっと見せてくれ」とさらに言いつづけてきました。
だんだん、障子の開いてる幅を大きくされてしまって、ついにはこの男がお姫様の部屋に入ってきてしまいましたが、ちょうどそのとき屋敷の者がみんな帰ってきてこれを捕縛。叩き殺して半分にちぎり、蕎麦[そば]畑と茅[かや]の原に投げ捨てたのでこの男の血が染みつき、それ以来、蕎麦や茅の根元は赤くなったんだソウナ。
☆ 莱莉垣桜文 附註
和漢百魅缶│2013.05.23
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