あさくさのけじょ 浅草の化女

あさくさのけじょ(浅草の化女)

むかし江戸に出たというおばけ。ある雪の夜に太田三郎右衛門という武士が窓からの景色をながめていると、とても大きな女の顔が現われて、鉄漿[おはぐろ]な口をあけてにっこり笑ってきたので刀で斬って払ったところ、パッと消えたと言います。

☆ 莱莉垣桜文 附註
『新御伽婢子』曰
「いたう更[ふく]る冬の月の影冷[かげすさま]じく障子にうつるままそのかたを見やりたるに色うす青き女房の黒歯[かね]くろく付[つけ]たる其顔の大き成[なる]事たとへば車輪のごとく其長[たけ]亭々たる深山木[みやまぎ]にひとしきが太田にむかひ莞爾[にっこ]と笑ひて立てり」

「車輪のごとく」というのは「ばしゅいぎょ」のように大きなことを示すことばのひとつ。「おおくび」や「けらけらおんな」などとは似たものです。

和漢百魅缶│2011.05.11
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