眼の玉がするするっと抜け出て、宙を飛んで行って、やがて失くなってしまうという夢。
むかし平清盛[たいらのきよもり]が出世を願って清水[きよみず]の観音さまにおまいりをつづけたあとにこの夢を見たといいます。
「これはわしのたましいが抜け出てしまう前兆で、分につりあわない願掛けをしたからなのでは……」と清盛は落胆していましたが、あるひとは「これはそのとおり目出たいことだ。あっぱれな夢だ。これから振りかかるであろう難の眼をぬいて、吉事を見るあらたな眼が入るということでしょう」と判じてくれたソウナ。
☆ 莱莉垣桜文 附註
『源平盛衰記』などにみられる平清盛が出世するまえの場面に出て来るはなしで、これから7日後に内裏でぬえ騒動の解決をすることになります。
『源平盛衰記』巻1 曰
「千日既に満じける夜は通夜したり夜半計に両眼抜て中に廻て失ぬと夢を見る」
和漢百魅缶│2025.01.09
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