山に住んでた大きな鬼婆。むかし、あるところの若殿さまが鷹狩で深い山に入ったとき、この山姥の小屋でたまたま休息をとったのですが、そのときの若い娘すがたに化けた山姥を若殿さまが大変に気に入り、御殿へ連れて帰りました。
山姥は側室として御殿に入ることになりましたが、たまたま正室の奥方さまと同じ日に若殿さまの赤ちゃんを産みました。
しかし、正室の赤ちゃんが弱々しい子だったので、山姥はこっそりと自分の産んだ子と取り替えて育てていました。
ところが3、4年後、すこし成長してきた本当の子が、山姥に出会うたびに「ははさま、ははさま」と呼ぶようになりました。若殿さまや正室の前でも「ははさま」と呼ばれて困った山姥は、自身のおとろしい正体を見せて「これでもおまえのははさまかッ」と叫ぶと、本当の子は「これこそわしの本当のははさまじゃ」と言ったので、山姥はそのまま自分の本当の子を連れて御殿からすがたを消し、山に帰って「金太郎」として育てて暮らしたソウナ。
☆ 莱莉垣桜文 附註
「金太郎」の母親であると設定されて語られる「やまんば」のうちの一ッのかたち。
和漢百魅缶│2024.06.05
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