しょうてんじゅ 正天寿

しょうてんじゅ(正天寿)

蟇[がま]の妖術をたくみ用いる妖術使いの賊で、足利義輝が天草・高麗征伐のために朝廷から貸与された「くさなぎのつるぎ」を盗み出し、将軍を暗殺してしまいます。

高麗国の武将で、九州の天草で闘った正林賢[しょうりんけん]の子供で、普段は耶蘇の開山の忘れ形見・七草四郎[ななくさしろう]と呼ばれていたほか、幕府などには天竺徳兵衛[てんじくとくべえ]だと名乗って登場します。

みかどのご威勢によって、妖術をもってしても内裏に侵入出来なかったのですが、それを打ち破ることの出来る「辰歳辰刻うまれの男の目玉」と「子歳子刻うまれの男の目玉」を、それぞれ赤松緑丸・赤松則祐からえぐりとることで、国崩しに本格的に着手しようとしましたが、「黒蛇の法」によって術を封じられ、退治されました。

☆ 莱莉垣桜文 附註
宝暦7年(1757)に大坂で舞台にかけられた並木正三らによる『天竺徳兵衛聞書往来』に登場する中心的な存在。

天竺徳兵衛の名前を「七草四郎」ものに採り入れた最初期のお芝居。キリシタンの妖術を用いるとしている点は七草四郎の設定を引いたものです。

黒蛇の法は、4尺5寸の黒き蛇の生き血を飲んで五臓に通わすというもの。

殺されたはずの足利義輝は、実は天寿の腹違いの弟・安大公(正福寿)と寸前で入れ替わっており、大切の幕で華麗に正天寿を取り囲みます。

和漢百魅缶│2023.08.20
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