馬[うま]でも鹿[しか]でもない状態になってしまった馬。
もともとはとんでもない暴れ馬で、仲間たちが「こらしめてやろう」と眠ってるあいだに、たてがみをバッサリ切って「おまえはたてがみがないから馬ではない、鹿だ」と言って群れから追放してしまいました。
困った暴れ馬は、山をこえて鹿たちのもとに行き、「おれはたてがみがないから鹿だ、仲間だぞ」といばってみましたが、鹿たちからは「おまえはつのがないじゃないか、鹿じゃないだろう」と、すぐに追い払われてしまいます。
泣きながら暴れ馬が歩いてると、山の神さまに出会ったので「たてがみも、つのもないので、どこへも行けないので欲しいのです」と頼み込むと、神さまはたてがみとつのを馬に生やしてやりました。
暴れ馬はよろこんで馬のもとへ帰っても「つののある馬はいないだろう」と放たれ、鹿のもとにまた行っても「たてがみがある鹿はいないだろう」と言われ、すべてのけものたちのあいだから浮いた存在になってしまったソウナ。
☆ 莱莉垣桜文 附註
山田野理夫『お笑い文庫 とんてきさん』の「馬鹿」に書かれてるもの。「ばか」ということばの語源説話をしたじきにしたものと見られます。
和漢百魅缶│2023.07.19
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