まつだふじたろう 松田藤太郎

まつだふじたろう(松田藤太郎)

幕府の若年寄・松田新左衛門のむすこで、仙台の養賢堂で学んだ名学者だという触れ込みで江戸に出て来た松之介[まつのすけ]という男を信用して幕府の儀式のための有職故実の手引きをつくらせましたが、一夜漬けでつくられたその中身はメチャクチャな引用羅列でまったく使い物になりませんでした。

その責めを受けて新左衛門は若年寄の座から退き、藤太郎は自害して果てました。

江戸から逐電した松之介は、名を変え京都で歌道教授をしてましたが、ある日に今大路道三という老人の庵に招かれました。その庵の書斎にはめずらしい書物がたくさんあったのですが、「妄語人ヲ害ス」と書かれてたふしぎな黒塗の箱がそこにあるのが眼につきました。

松之介があけてみると、なかには藤太郎の死骸が入っており、「あなたも恥を知らねばなりませぬ…」と立ち上がって松之介に近づいて来たので、松之介はほうぼうのていで逃げ出し、そのまま発狂してしまったソウナ。

☆ 莱莉垣桜文 附註
山田野理夫『日本妖怪集』第2集の「有職故実の本」というはなしに登場するもの。

和漢百魅缶│2023.07.02
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