上総の山奥に住んでたという、竹を好んでた山伏。つよい神通力を持ってたといいます。
あるとき、屋敷の竹やぶの筍[たけのこ]が隣人に荒らされてたので大いに怒ったことがあったのですが、その直後に数日間の他出から信円が戻ると、今度は筍がすべて採り尽されてたので、不動明王の画像をさかさまに掛けて隣人一家を呪詛しました。
しかし、呪いのちからによって信円とその息子のほうが先に死んでしまいました。隣人一家も3日後にみんな死んでしまったのですが、筍を採り尽してたのは実のところは隣人一家ではなく、真犯人である別の家の者もその数日後に死んだといいます。
以後、この筍をめぐるいさかいの呪いで死んだ者たちの霊が、竹やぶで刀を振りながら罵り合うような音がつづいたソウナ。
☆ 莱莉垣桜文 附註
山田野理夫『日本妖怪集』第2集の「書簡」というはなしに出て来るもの。この作品は、生き残った信円の娘が手紙形式で身の上を語るという物語になってます。
和漢百魅缶│2023.07.01
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