讃州に伝わるもので、法会の席にいるにもかかわらず「狩り(殺生)に行きたいなぁ」と考えてたせいで、蛇身になってしまった狩人。
むかし、当願[とうがん]・暮当[ぼとう]という兄弟の狩人がおり、当願は志度寺の建立供養に、暮当は山へ狩りに出かけました。法会の最中にも当願は狩りのことばかり考えてたので、その邪念のせいで体が蛇になってしまいます。
暮当が帰らぬ当願を探しにゆくと、変わり果てて熱と異気に苦しむ兄をみつけたので、運んで池に入れてやりました。当願は自分の左の目の玉をくりぬいて別れを告げると水底へ入って行きました。
その目の玉を甕[かめ]に入れておいたところ、たいへん良い酒が出来るようになり、またいつまでもそれは尽きることはなかったといいます。
☆ 莱莉垣桜文 附註
志度寺の「当願暮当之縁起」などでひろく知られてた縁起物語に出て来るもの。暮当がお寺に行けなかったのは家族のたべものが無くなったせいだと語られてます。
縁起物語では、暮当の妻がこの目の玉(如意宝珠)のことを知って語ってしまい、両眼をみかどへ献上せねばならなくなってしまいます。宇佐八幡へと奉納される道中、竜神に奪われますが、最後は無事に宇佐へと流れついたとされます。
当願はその後、池から海へと住み家を移しており、大槌小槌のあたりにいるとも語られてたようです。
和漢百魅缶│2022.12.09
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