まりがなろのみやびと 鞠ヶ奈路の宮人

まりがなろのみやびと(鞠ヶ奈路の宮人)

安徳天皇の霊に仕えてる霊たち。

むかし、城了[じょうりょう]という琵琶[びわ]の得意な僧侶が、横倉寺に逗留してたのですが、夜おそくどこかへ行ってるらしい様子なので、ふしぎに思った寺の僧侶が訊ねると、「子[ね]の下刻になるとどこからか宮人[みやびと]がやって来て、まりがなろというところにある御殿に招かれ、そこにいる貴人の御前で琵琶を弾いて、暁け方にまた案内されて寺に帰って来ます」とのこたえが返って来ました。

住職の仙英[せんえい]は、「まりがなろの御殿というのは安徳帝の幽宮のことなのではないか」と気づいて、相手が霊である心配から、城了のからだじゅうに加持の香水をかけてあげて、あの世につれて行かれないようにしてやることにしました。

しかし、その加持の香水がうっかりゆきわたってなかった耳のみ宮人に検知されて、ちぎって持って行かれてしまったんだソウナ。

☆ 莱莉垣桜文 附註
土州の越知に伝わるもの。のちに城了の歿後に建立された耳無し地蔵の由来のはなしとされてます。

鞠ヶ奈路・鞠ヶ奈呂は安徳天皇の墓所として知られる場所。対処方法が異なるもののはなしの流れそのものは、耳切れ団市や耳なし芳一とおなじ展開のものというのがわかります。

和漢百魅缶│2022.11.14
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