江戸の三年坂のあたりにあったお屋敷に出たというもの。部屋のそうじをしてるのが、その日は病気で寝込んでるはずの女だったので、へんだナと思って確かめにゆくと、その女はたしかに部屋で臥せっており、もう一度戻ると、そうじをしてた女のほうは消え失せてたといいます。
そういえば、紫色の足袋[たび]をはいてたのが妙だナと思ったと印象に残ってたというハナシ。
☆ 莱莉垣桜文 附註
『梅翁随筆』などに書かれてるはなしにみられるもので、このお屋敷ではほかにも、たびたび謎の火が燃え上がったり、夜仕事をしてると行灯のあかりのなかで顔がのびちぢみしたり、へんなことがしょっちゅうあったといいます。
和漢百魅缶│2022.09.02
Design. Koorintei Hyousen 2022