あしげのぞうやく 葦毛の草駅

あしげのぞうやく(葦毛の草駅)

蚕[かいこ]のはじまりになったというふしぎな馬。

むかし、ばんこ大王のむすめにあたるお姫様。大王の飼ってた葦毛の名馬がその美しさにこがれ死に、その皮をほしてたところ、その近くをお姫様が通りかかると皮が突然まいあがって覆いかかり、お姫様はたちまち「あしげのぞうやく」に変わってしまったソウナ。

臣下たちは、馬に替わってしまったお姫様を桑[くわ]の木の林にかくしたのですが、そこでこの馬が桑の葉を食べて絹をつくりだしたのが蚕[かいこ]のはじまりなのだトカ。

☆ 莱莉垣桜文 附註
「ぞうやく」は「めす馬」の意味。「ぞう」の字は馬+草が本字。ばんこ大王は盤古大王と見られる。

『伊勢物語』の古註のひとつ『伊勢物語懐中抄』に、「なかなかに 恋に死なずは 桑子にぞ なるべかりける 玉の緒ばかり」の和歌の「くわこ」=「蚕」、昔も蚕となることで恋の本意を遂げたためしがある――という説明に出て来るはなしにあるもの。

蚕は馬の顔に似てる・絹は一ぴき二ひきと数える、などの古註もつらなってますが、「馬頭娘」のはなしが古註として佃承されたものであって直接に和歌と関係のあるものでは無いものです。

和漢百魅缶│2020.01.04
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