むらさきのばいおう 紫野梅翁

むらさきのばいおう(紫野梅翁)

ひとのようなすがたになって大きな家にやって来て、その家のもとめに応じて書をかき、お酒をもらったり、いくばくかの謝礼をもらって去って行ったという狸。梅翁という名を名乗ってたり旅の僧侶のすがたで現われたりしたといいます。

越前の舟橋で犬に食い殺されていなくなったとも言われてましたが、その後も同様の筆致の書をかいて去る旅の僧侶があったりしたそうで、生死は定かでなかったようです。

梅翁と名乗ってやって来たとき、言葉は発さず、すべてかな書きの筆談で会話や書の要望などをきいてたそうです。

☆ 莱莉垣桜文 附註
諾々斎青渓『奇事談』曰
「寛延の頃とや下の方より海辺浦づたひ紫野梅翁というて駕篭に乗[のり]宿送りにして通りし者有り其形四尺許の男 面体毛多くして言語なく凡てかな書にて筆談す」

「旅僧立寄り鉢を乞ひしゆゑ幸ひ追善の折節 呼入れ一飯を振舞ひしに此僧も紙筆を持ちて望に任せ書す 皆々彼梅翁といひし者の手跡に露違はず」

和漢百魅缶│2017.11.07
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