むかし、紀州の殿様のお城に巣食ってたという大きな図体の化け狸。
紀州那賀郡などの昔話に出て来るもので、綿打ち勘松[かんまつ]という男が、うっかり殿様の行列の前で不注意なことをしてしまって尋問を受けたとき「弓の名人です」と、いい加減な答えをして何とかお手討ちをまぬがれますが、「弓の名人とはちょうど良い、ぜひ城へ来てくれ」と懇願され、下がるに下がれなくなってしまいます。
理由はこの狸退治だったのですが、無論、綿打ちの弓と武具の弓は別物なので撃てやしません。ところが、たまたま失敗して飛び出た矢が天井裏にいた大古狸に大命中。退治できてしまいました。
☆ 莱莉垣桜文 附註
勘松はその後も色々な難事件を運だけで解決できてしまいますが、実はぜんぶ夢だったというのが結末。
和漢百魅缶│2017.08.26
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