やまぬしおうむ 山主鸚鵡

やまぬしおうむ(山主鸚鵡)

大伴山主[おおとものやまぬし]が都から流された果てに、小町姫を思うこころと怨みのこころから岩にあたまをうちつけて死に、その血が蟹[かに]にかかった結果、その蟹に人面がつき、やがてその蟹は小町姫をつけまわす鸚鵡[おうむ]になって飛び出したというもの。

都へ飛んでゆき、小町姫を監視したり、うらめしいことを訴えて出没したりしました。

☆ 莱莉垣桜文 附註
鶴屋南北『小町紅牡丹隈取』に登場するもの。鸚鵡をつかったのは七小町のうちのひとつ「鸚鵡小町」を活かして採り入れた趣向。

鶴屋南北『小町紅牡丹隈取』曰
「芦間[あしま]の蟹にあさましき死を遂げんよりこの岩に頭[かうべ]を打ち付け死するとも一念残って小町姫思ひを晴らさでおくべきかト頭を岩に打ち付くれば血汐は落ちてあたりなる蟹にかかればふしぎやな甲羅にありあり人間のおもてあらはれ這ひ寄るにぞ 山主にっこと打ち笑ひあらよろこばしや吾が存念叶ふしるしと見やるうち蟹はたちまち鸚鵡[あふむ]と化し船を目がけて都の空 こなたは今際の断末魔次第々々にいのちの引き潮あはれおそろしトどろどろになり望夫石の文字[もんじ]心火にて焼き失せる 鸚鵡は向かふへ飛行す山主落ち入る体にて拍子幕」

和漢百魅缶│2017.08.01
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