むかし、丁蘭[ていらん]という若者が幼いときに亡くした母のおもかげを木像にして家にまつってたというもの。木像自体がいろいろと夢に出て来たりとふしぎなことがありました。
丁蘭の妻が、あまりにも木像に対して敬虔な夫の態度に激怒して夫の留守に木像の顔を燃やしたときはそれを知らずにいた丁蘭の夢の中に母の木像があらわれて「なんじの妻、われの顔を焼く」と通報。
丁蘭のとなりに住んでる男が斧を借りにきたとき、丁蘭が木像に「貸し与えてもよいですか」とうかがうと像がなんだか心地のよくない表情をしてたので貸すのをおことわり。怒ったとなりの男が丁蘭の留守に斧で木像の片腕をぶったぎったところ血がどくどく。丁蘭はとんでもなく怒ってとなりの男の首をはねて母の墓前にそなえたトカ。
☆ 莱莉垣桜文 附註
『今昔物語集』巻9第3「震旦丁蘭造木母致孝養語」曰
「堅き木也と云へども母と思て孝養を至せば天地感有り 赤[あかき]血 木の中より出づ」
和漢百魅缶│2017.06.27
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