むかし、飛州益田郡の酒屋・高坂屋彦左衛門の家に飼われてた熊[くま]という呼び名の猫[ねこ]。
何年も過ぎたころ、近所のひとが「高坂屋さんの猫はときどきお宮の森で歌って踊ってる」などといった噂が出るようになり、彦左衛門がまさかと思ってしばらく隠れて監視してみた結果、二本足で立って家のてぬぐいを持ち出し、鎮守の森のなかで猫たちに囲まれて踊ってるのを、しかと目撃。
刀でもって切りつけるとたちまち巨大な身の丈の猫になり、そのまま倒れたといいます。そのときの刀はそのままお宮に奉納され「ねこきり丸」と呼ばれたそうですが、その後は高坂屋のあきないは傾いてしまったトカ。
和漢百魅缶│2017.02.11
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