恨みが酢だこにのりうつったもの。むくむくと動きだして酢をふきかけたりして来ました。
☆ 莱莉垣桜文 附註
墨川亭雪麿『力瘤三八異伝』曰
「ふしぎやこのとき一群の風しうしうと吹き起こるにつれてくだんの女の死骸の胸より陰火ひらめきいで かの法師が庖丁せんとなしける蛸[たこ]にまとひつけばたちまちに蘇りてまなこをいからし酢を吐きかけ僧が持ちたる庖丁を奪ひ取って振り上げつつ向かへるさまのいと凄まじきは かの女の恨みの念かと思はれたり」
殺されて胎内の子供を奪われた女の恨みが、酢蛸にのり移るという趣向ですが、鈍念(犯人である悪僧侶)にすぐ庖丁を奪い返され、蛸はそのまますぐ調理されてします。鈍念は胎児を黒焼きにして「孫児丹」というものをつくり「食せざれども餓えず」というその薬効を手に入れようとしてたのでした。
和漢百魅缶│2016.12.07
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