ちちきず 乳疔

ちちきず(乳疔)

胸の乳についたきずがやがて腫物[はれもの]になり、腐りただれて目や鼻や口のようなものが生じて顔面のようなものが生じるというふしぎなもの。

うらみなどがこれを起こさせたりする、として徳川時代の絵本などに登場します。

☆ 莱莉垣桜文 附註
山東京山『操竸双生渡』曰
「朝妻が乳の疵[きづ]腫物[しゅもつ]となりて腐りただれ そのくさき事いわんかたなく とてもよき所にては買手もなく稲川のしろて村といふ所へ売り替へけるに朝妻が器量は千人にすぐれども かのできものにて客もなく 茲[ここ]にても様々に療治しけるが朝妻ゆめのうちにて かの幽霊に悩まさるると見て 夢さめけるが不思議や乳の腫物 人の顔の如くになりのちのちには口も鼻もいでき 世にいふ人面疔[にんめんてう]といふものの如くなりしは かの幽霊の思ひなるべし」

山東京山の作品などに見られるもので、「にんめんそう」の伝承を使ったもの。 最終的には、朝妻にうらみをもちつづけてたゆうれいを成仏させてあげたことにより、これは消える展開になります。

和漢百魅缶│2016.11.14
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