土州香美郡などにつたわる昔話に出て来るもので、観音のつかいであるという熊[くま]。
むかし、店にかけていた自作の和歌の巧さから若殿さまに嫁に欲しいと言われた茶店の娘があったのですが、継母が自分の娘を嫁にしたいと考え、殺してくるように父に迫ります。
娘を森で殺すのにふんぎりがつかない父親は「若殿さまに茶をさしだしたこの腕がいけないのだ」と、娘の腕を斬って去ってしまいます。
その腕をなめて治してつなげてくれたのが、この熊で、離れた土地の畑に娘を案内して、そこの畑の番人の仕事をみつけてくれます。
その後、熊が近在の村々の畑を荒らすおそろしい妖怪に化けてあばれ、それを退治におもむいた若殿さまを娘のいる畑におびきよせて娘を発見させ、ふたりをふたたび出逢わせてくれましたソウナ。
和漢百魅缶│2016.10.11
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