いちじょうきゅういん 一条蚯蚓

いちじょうきゅういん(一条蚯蚓)

むかし、ある農夫が畑仕事をしてるさいちゅうに、くわでいっぴきの蚯蚓[みみず]のあたまをぶつっと切り落として殺してしまった。

それから何十年もたって、ある立派な禅僧が梁の国の帝のもとを訪れたとき、たまたま象棋[しょうぎ]の勝負に没頭してた帝が碁について発言した「殺せ」という発言を、家臣たちが禅僧への処置だと勘違い。打ち首にされて殺されてしまいます。

象棋を終えて「さっきの禅僧はどこで待たせておる、つれてこい」と命じた帝は、ことの次第にびっくり。禅僧が何かいって無かっただろうか、と問うと、家臣たちは禅僧が打ち首になる前に、「わたしは前世で蚯蚓を殺した農夫でした、帝こそ、そのときの蚯蚓の転生したおすがただったのでしたか」とか変なことを申してました、と語ったソウナ。

☆ 莱莉垣桜文 附註
『朝野僉載』などにあるはなしで、梁の武帝が帝の役割で登場しています。「殺せ」にあたる語は「殺掉」。

柴田宵曲によれば『宝物集』にも、似たものがあり(そちらは蚯蚓ではなく蛙)天竺由来の説話ではないかとしています。

和漢百魅缶│2016.08.28
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