きたかぜすけのじょうのしょう 北風助之丞の妾

きたかぜすけのじょうのしょう(北風助之丞の妾)

武州立野に住んでた北風助之丞という男のおめかけさんの亡霊[もうれい]。むかし、五十鈴貞右衛門[いすずさだえもん]という武士が夜に入間川をとおりかかると、この亡霊が出て来て、自分をいじめて殺した北風の正妻のもとへ行きたいが川を渡れないのでかついでいって下さいと懇願。

貞右衛門が連れて行ってやると、北風の家に「千手だらに」のおふだが貼ってあるのでまた亡霊がは札へがしを懇願。はがしてやった結果、亡霊は正妻の首をひきちぎって恨みを晴らすのを完了できましたソウナ。

☆ 莱莉垣桜文 附註
さかだちしてる亡霊を助けてやるはなしの例の一ッで、『武道真砂日記』にあるもの。亡霊は「御かげにて本望をとげ瞋恚のほむらを離れたり今よりして我[わが]すがたをうつして御家のまもりとなし給へ必ず御武運をまもらん」といって去ります。さかだちしてる絵姿を飾ると良いというはなしですが、五十鈴貞右衛門は手助けをしたひけめから北風助之丞のむすこの助太郎にこの絵姿を渡して主家への仕官を斡旋してやり、自らは出家して隠棲をしたという筋書き。

和漢百魅缶│2016.01.04
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