山の峠道に巣食っていて、通るひとびとをことごとく食べてしまってた恐ろしい大おおかみ。
むかし、ある男が郷里の父親が急病であるとの知らせを受けて家に帰る途中、この狼のいる山に入ってしまい大遭遇。男が「父のもとに急いでるのでどうぞ今は食べないので下さい」と頼むと「孝行で感心な男だ」と言って狼は許可してくれます。しかし別れぎわに狼が「お前のいちばんおそろしいものを聴いておこう」と訊ねたので男は「……お金が一番苦手です」と申告。すると狼も「おれは柿のしぶと煙草のやにだ」と申告したので、男は郷里に帰るとすぐにそれらを調達しておき、後日、男を食べに来たこの狼を追っ払いましたトサ。
☆ 莱莉垣桜文 附註
五島列島などにつたわる昔話に出て来ます。大蛇や変化などが弱点を語ってしまうはなしと同類のもの。復讐にお金を大量に投げ込ませるのも同様。
この狼の場合は、しぶ・やにが身体にかかると、毛がぼろぼろ脱け落ちてしまい、ただれた赤剥けになってしまったとされます。
和漢百魅缶│2015.11.11
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