東京の山の手にあったある温泉に出たというもので、お湯をあびてると「だんな、お背中を流しましょうか」という声がどこからともなくするのですが、まわりを見ても誰もいないというもの。
あの温泉はばけものが出るという噂がたかまってしまいましたが、温泉の持ち主は「化物を見とめて番台へお知らせくださった方には唐桟を一反お礼として差し上げます」という貼り紙を工夫。するとお客がどんどん増えてややもうけ。ついにはお客全員に景物や菓子を渡す日までもつくってさらにおおもうけしたソウナ。
☆ 莱莉垣桜文 附註
明治18年ころあったはなし。けっきょく何が正体だったのかはわからずじまいな感じ。
和漢百魅缶│2015.10.19
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