大きな蜘蛛[くも]が化けているもので、人間にきれいな香箱を見せてきますが、それをさわってしまうと手が離れなくなり、何とかはずそうと頑張ってもがくうちにどうにも身動きがとれなくなってしまいます。
動けなくなったところで蜘蛛の姿にもどり、じわじわと血を吸って食べてしまうのが目的。
☆ 莱莉垣桜文 附註
『宿直草』に書かれているはなしに出て来るもので、出された道具(あるいは出て来た道具)にさわってしまうと手が離れなくという手法は他に昔話などにも見られるほか、一部の「つるべおとし」などにも見られます。
『宿直草』蜘蛛人を取る事 曰
「彼の琵琶法師 香箱の優しきを取り出し是よき物か見て給はれとて我が方へ投げたり。さらばとて右の手に取るに鳥黐[とりもち]の如くして離れず左にて押さふるにも又取りつく。左右の足にて踏み落さんとせしに足も離れずとかくとする内に彼の座頭蜘蛛と変じて我をまとひて天井へ昇りひたもの血を吸ひ喰らふ」
和漢百魅缶│2015.09.16
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