あの世に向かってすたすたものすごい速さで歩いてるというおぼうさん。
むかし、江戸の番町の小林という屋敷に奉公してた召使いのばあさんが、一度重い病状におちいったとき、夢のようなここちの中でこれにあったそうで、どこを歩いてるんだかわかんない場所だったんで、ご出家の歩いてる方角ならどこかに着くだろうと思って、呼びかけたけど返事がない。すたすた歩いてるおぼうさんのあとをついていったが、あまりにその足が早くて追いつけずにいたところ「おいおい」と呼ばれる声がしたので振りかえってみたところ、息を吹き返して死なずにすんだんだソウナ。
☆ 莱莉垣桜文 附註
根岸鎮衛『耳袋』にあるもので、あの世を見て帰って来てよみがえったひとのおはなしに出て来たふしぎなもの。
和漢百魅缶│2015.08.29
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