文政のころ、千葉という男が仲間たちといっしょにたけのこを採りに山へ行ったときに目撃したといういもむしのようなふしぎな虫で、長さは2尺くらいで太さが1尺、頭はお獅子に似て、背中には鱗が生えてたといいます。
☆ 莱莉垣桜文 附註
平尾魯仙『谷の響』曰
「長さ二尺ばかり匝[まはり]は一尺もあるべき形状[かたち]芋蜀[いもむし]の如く短きものにして背に金色の鱗を累ね頭は小児の翫[もてあそ]ぶ獅子といふに似て眼口大きく髪を被りていと怕[おそろし]きものなる」
「竜にあらず蠎蛇にあらずいまだ諸史にも見へざる虫にていといと奇代のものなりとこの千葉氏は語られき」
この虫は眺めていると、そのまま千葉たちの目の前をとおりすぎてやぶへ入ってどこかへ行ってしまったといいます。
和漢百魅缶│2015.08.16
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