源頼政[みなもとのよりまさ]にもその技を伝えたという弓の名人・臼井庄司広匡[うすいのしょうじひろまさ]とその女房の妄念がこりかたまって生まれた怪物で、夜な夜な近衛院を悩ませて病気にさせました。
広匡は、みずからの娘・あやめを頼政に嫁にやると言っていたのですが、あやめの美しさが噂に噂をよんで内侍として召し上げられるということになり、あやめを引っ立た役人に打たれて広匡やその女房も殺されてしまったことが、妄念が怪物となった発端。
神主・卜部兼友[うらべのかねとも]の見立てにより「近衛院の御悩は、院にうらみある男女の死霊によるものじゃ」という事が知れ、その後、黒雲とともに怪物があらわれたので、これを頼政が友匡から授かっていた「雷上動の矢」で射落とし、その恩賞として獅子王の剣とあやめを授かる、といったおはなし。
☆ 莱莉垣桜文 附註
浄瑠璃の『待賢門夜軍』に登場するもの。怪物は、声はぬえ・頭はさる・形はとら・尾はへびというもので、頼政が退治したとされる「ぬえ」をその筋立てのモトにしています。
和漢百魅缶│2015.07.25
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