かつのすけのばけもの 勝之助の化物

かつのすけのばけもの(勝之助の化物)

文政2年(1819)4月に「水戸家のおかかえ大鼓打[おおつづみうち]の山本勝之助が赤羽根からの帰り道に、酒井家上屋敷の前で雨のなか出遭った」と、江戸でうわさになった妖怪。

勝之助が「こんなばけものであった」と描いた絵まで一緒になって広まったのですが、実際のところは事実無根であったというハナシ。

☆ 莱莉垣桜文 附註
奥方に「こんな天気の悪い日にあなたさまはお酒を呑むと必ず転びますからぜったい呑んではいけませぬよ」と言われてた山本勝之助が、結局出先で進められて呑んでしまって帰り道にズテンと転倒。泥だらけになってしまった着物に関するいいわけとしてこしらえたのが「酒井さまの前で化物に出遭って逃げたら泥だらけになった」というつくりばなしで、翌朝弟子たちが来たときにひっこみがつかずにこれを絵まで描いてしゃべってしまったことで噂がお江戸にひろまってしまったそうです。

『文化秘筆』曰
「弟子共 早朝稽古ニ参所 未ダ起申サズ 女房申ニハ昨夜赤羽根ニ参テ帰ニ酒井様前ニテ化物ニ出合[であひ]」コロビ着用物モ泥ニナシ帰リ候ト咄[はなし]候由 其ノ内ニ亭主モ目ヲ覚シ出 昨晩ハ化物ニ御出合ノ由 実ハウソニ候ヘ共ウソト申サレナク実[まこと]ニ逢[あひ]候様ニ咄[はなし]絵図面ナド認[したた]メ見セ夫[それ]ヨリ所々ニ広マリ絵図面所々ニ写[うつし]候由 実ハ拵事[こしらへごと]ニ候由ニ申事也」

和漢百魅缶││2014.09.22
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