陸奥の八戸などにつたわるもの。むかし、ある貧しい男が暮れになってどうも算段がつかなくなり、暗いなか親戚の家に金をかりにいこうとすると、真っ暗い道から「金は借りなれないから家さ帰れ、それで油鍋で小豆を煮ろ、煮ろ」と声だけがしたので、そのまま家に帰ってそのとおりしてみたところ、鍋をさげてる自在鉤[じざいかぎ]から「よいか」と声を出して何だかよくわからないものが現われて鍋に飛び込み、それ以後、その男の家はやたらと栄えて長者になったトカ。
和漢百魅缶│2014.01.30
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