陸奥の鮫村につたわるもの。毎年家の戸に飾って魔よけにする麦わらの人形をつくる俗信が村にあったのですが、ある家のおかみさんは「そんなのしちめんどくさい」と人形をつくらないでいました。6月24日にはその人形を人形森というところにおさめに行くのですが、そのおかみさんは麦わらをひとつかみくらい持っていっただけでした。
人形森の帰り道、見たことのないふしぎな坊さんとすれ違ったところ、「ごくろうごくろう、がきは火にくばってら行ってないが」と妙なことを言って姿を消してしまったので、おかみさんがふしぎに思いながら家に戻ると、子供が焼け死んでしまってたんだソウナ。
☆ 莱莉垣桜文 附註
6月24日にあつめられた人形は恐山の三途の川の橋をつくるたすけをする役目をもってる、とされていました。人形が「何かを建造するため」に使われるというのは「ひょうすべ」などのはじまりと共通してる感じがありますが、詳しいつながりがあるかはよく知りません。
和漢百魅缶│2012.08.25
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