のかぜ 野風

のかぜ(野風)

横島軍藤六[よこしまぐんとうろく]の妻で、悪女。それまでに害したひとたちの怨念によって重い病気におちいり、ついには体が腐り、九十九個の口が生じた妖怪になってしまったというもの。

☆ 莱莉垣桜文 附註
読本の『天縁奇遇』に出て来るもの。この作品は嘉吉ころの赤松家を材に採ったもので、軍藤太たちの話の舞台は讃州志度。志度寺でこの野風が「九十九口の女」として見世物にかけられていたところに、軍藤六によって親を殺された赤松米吉が観音様のみちびきによって出遭うのがみどころ。
神屋蓬洲『天縁奇遇』曰
「されば古今に奇[あや]しと奇[あや]しきを見するもの。或[ある]は頭の双ある児。蛇遣ふ女。人魚雷獣の類。其外あげて算[かぞ]ふるに遑[いとま]あらねど。九十九口[くじうくこう]の女と云[いへ]るは誰も見もせぬ。未曾有[みぞうう]の妖怪[ようかい]なれば。往来[ゆきき]のもろ人所せきまで此[この]仮家につどひ来たり。」

和漢百魅缶│2011.02.23
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