だいひざんのだいじゃ 大悲山の大蛇

だいひざんのだいじゃ(大悲山の大蛇)

磐州行方郡の大悲山にある薬師堂の近くの池に棲んでた大蛇。

都のほうからやって来た、玉都[たまいち]という琵琶法師は、薬師堂におこもりをしてたとき、夜になると池のほとりで琵琶を奏でており、大蛇は武士のすがたに化けて、毎晩それを聴きに来ていました。

ある晩、成長した体が池におさまりきれなくなった大蛇は、玉都に「7日後、池のまわり七里四方を泥海にするので、お前だけはこの地から去れ、他の者にこれを教えたら八つ裂きにするゾ」と告げて帰って行きました。

玉都は人々が泥海に沈んでしまうことを見捨てることが出来ず、相馬の殿様にこれを知らせて人々に避難を進めました。すると玉都は黒雲に巻かれて行方知れずになってしまいました。村人たちは蛇の嫌う、鉄の釘を大悲山にびっしりと仕掛けて大蛇を退治し、泥海に沈まずにすんだといいます。

☆ 莱莉垣桜文 附註
大悲山のある小高には、耳谷(みみがい)角部内(つのべうち)などの地名も、退治された大蛇の耳や角に由来してるとされており、耳や角を持つ蛇体だったことが知れます。

しょうじんがいけのぬし」なども近い構造のはなし。

和漢百魅缶│2025.10.25
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