勢州の鈴鹿山にいた美しい魔物。伊勢神宮や都に向かう道中のひとびとを襲って財宝や命を奪ってました。
朝廷の命を受けて退治に来た田村将軍と、矢につけた手紙を送りあう内に惹かれ合うようになり、実は「世を守る」存在であることを打ち明けて、陸奥きりはた山の「あくろおう」を力をあわせて退治しました。
☆ 莱莉垣桜文 附註
「蟇目」の弓のはじまりのはなしの一例として、『庭訓往来註』(庭訓往来抄)などに説かれてた古註に登場してたもので、広く語られる「すずかごぜん」と同根の物語です。
蟇目[ひきめ]は田村将軍が立烏帽子と矢のやりとりの末に妻として鬼退治をしたという展開にもとづく引妻[ひきめ]に由来してるというのが説話の核の部分。
鈴鹿山にいる大化生[だいけしょう]のものと記されてて、天女だとする部分や甦生する箇所も出て来ませし、阿黒王を倒しておしまいです。また、田村将軍の名前も利成[としなり]で、物語・浄瑠璃とは設定は異なります。
和漢百魅缶│2025.04.14
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