つえのしょうね 杖の性根

つえのしょうね(杖の性根)

むかし、ある男が杖にするのにちょうどいいような大きさの木の枝をひろったので、大切に細工をして杖にしていたところ、男の留守中にたまたまその家に泊まった旅の商人が「この杖はとんでもなく素晴らしい、しばらくしてまたここを通るが、是非これこれの値で売ってくれるように頼んで下され」と家族に高額な値を告げて懇願して行きます。

帰った男はその話を聞いて、「この杖はそんなにすごいのかな」とふしぎに思いながら振り回していると、家のあがりかまちに杖がガチンと当たると共に「きぃぃぃぃぃぃ」というものすごい声が。

後日、またやって来た同じ旅の商人が言うには「実に惜しいことをした、それは変に叩いて杖の性根が飛んでいってしまったときの声です、はいったままであったらもっともっと高くなることもあったのに」ということだったトカ。

☆ 莱莉垣桜文 附註
播州佐用郡などにつたわる昔話などに見られるもので、話の構造は中に魚の入っている石などと近いです。ふしぎな杖のはなしには「かんじょう」などがあります。

和漢百魅缶│2016.04.21
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