とくべえのかない 徳兵衛の家内

とくべえのかない(徳兵衛の家内)

越後古志郡の千手町につたわるもの。むかし、仁助[にすけ]という孝行者の荒物屋に「どうしても塩がいるので、この馬鍬[まぐわ]を質にして塩を2升かして下さい」と頼んで来たという女のひとで、仁助が「質などなくとも、名さえ聞かせてくれれば貸してあげますよ」というと、「小山村の、徳兵衛の家内です」と答え、結局その真っ黒で泥だらけのきたない馬鍬をそのまま仁助に渡し、塩を借りていきました。

しばらくして、仁助が小山村にたまたま行ったときに「徳兵衛というひとはいますか」と村の人にたずねると、該当者なし。わずかの塩であるからよいかと思い、置いていかれたままにしておいた汚い馬鍬を洗ってみると、すべてが純金であったのでびっくり。

仁助は以後、塩を商売にしておおがねもちになったソウナ。

和漢百魅缶││2015.01.09
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