くろくちこい 黒口来い

くろくちこい(黒口来い)

筑前の十石山につたわる鳥。「りょうしこい、くろくちこい」という声をたてて山の中を飛び回ってるといいます。

むかし、山に狩りに来た武士がひと休みしてたところ、連れてきていた黒口[くろくち]という犬が飛び掛ってくるような剣幕で吠えまくります。「わしを喰い殺す気か」と思って鉄砲で撃ったところ、黒口は跳ね上がり、近くにひそんでた大蛇を咬み殺して死にます。

犬が大蛇に気づいて吠えてたと知った武士は、自分の短慮を恥じて犬をとむらったあと、山で自害をしてしまいます。そのことを村人づてに聴いた武士の妻が、悲しみながら山に来て「りょうしこい、くろくちこい」と泣いているうち、鳥になってしまったんだトカ。

和漢百魅缶│2013.09.20
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