

あおじめ
野菜の畑などに現われる青黒い目玉のようなふしぎな実。これが出来るとものすごく大きな実がついたりするんだトカ。

あかいしたあおいした(赤い舌青い舌)
「赤い舌、青い舌、どっちがいい」ときいてくるおばけで、どちらを答えても、その色の舌が出て来てなめて来るんだソウナ。

あかざや(赤鞘)
海に住んでる大きなもの。平素は赤いツノのような部分を海の上に出して泳いでると言います。

あこがる(浮岩)
まるい岩っころのような姿をしてるおばけ。

あねさんはこび(姐さん運び)
畑などにあねさん(てんとうむしのこと)を連れて来たり、逆に持って行ってしまったりするもの。

あぶらのあしあと(油の迹)
座敷や板の間などに油がぼとぼとひと筋に落ちたようなあとをつけるおばけ。

あぶらつげのおばけ(油つげのおばけ)
若い娘の姿をしたおばけ。人間の体に油を垂らしかけつづけて、ついには殺してしまうんだトカ。

いしぶしおんな(石伏女)
いしぶしと言う魚の精が化けたもの。

いちもまくら(壱毛枕)
夜中に枕[まくら]のような大きさの毛の生えたふしぎなものが室内を跳ね回るといったもの。毛の音がパサッパサッ。

いもはら
小芋[こいも]の化けたもの。とろとろすってん。

うたぢゃわん(哥茶碗)
伏せておくとふわふわ飛び上がってうたを唄い出すというふしぎな茶碗。

うみばち(海高鉢)
海の潮だまりなどに現われるという鉢をひっくり返したみたいなかたちのひかりもの。

えきかほう(腋窩泡)
お湯につかったときに、やたらとわきの下からあぶくが出て来てふしぎと止まらない、といったもの。何日もこれがつづくと死んでしまうんだトカ。

えむすめ(枝娘)
枝の上に現われるという女のひとの顔をした虫のおばけ。

おうぎのもや(扇の靄)
夜、扇を逆さにしたみたいな形の白いもやもやが浮かんで、歩いてるひとの前をふわふわしたりするというもの。

おおくびもち(大首餅)
おおきな飾り餅からおおきな首がバリッと出て来るといったもの。サテモねばり強き執念じゃなあ。

おおたちぬの(大裁布)
「すー」とか「ちゅー」とかいう音とともに行く手の空や山に現われるという巨大な布のようなもの。

おどりかたびら(踊帷子)
古くなった帷子のおばけ。ふあふあ踊ります。

おみぞう(おみ象)
真っ赤な体をした一ッ目の象さん。おみってる。

おもてづの
大きなツノの生えた山のように大きなおばけ。

およりむし(お寄虫)
青菜などをバリバリ食べて荒らしてしまう虫で、「よりより」という声をたてて出て来ます。

がいぐい(がい喰)
大きなつぼのような形の体をしてる大坊主なおばけ。すいかが好き。

かきなむしゃ(欠菜武者)
勇ましい欠菜[かきな]のおばけ。

かぎぶどづる
ひょろながい体をしてる葡萄色のおばけ。

かたすみのさけ(片角酒)
どんないれものにいれておいても、どんなに自分の近くに置いておいても、気づくと部屋のどっか片すみにひとりでに歩いていっちゃってるというふしぎなお酒。

かとうき(華鐙鬼)
頭に華鐙(灯りのひとつ)をのっけている鬼。

かわまつぎみ(川公達)
川の中にすんでいるおばけで、水面に何体もたたずんでいる姿を船頭などの前に出してびっくりさせたりします。

かんきんちりりんだらりん
天竺にすむ「りゅう」のきんたまの毛をあつめてつむいで織ったという気温に即して変化するふしぎな織物。寒くなるとちりめんのようにちぢんだり、暖かいと適度にやわらかく薄くなるんだトカ。

かんばむし(かんば虫)
ひとに取り憑いて肌やまぶたをカサカサクシュクシュにしてしまうという病虫。

かんばれみち(寒腫道)
寒い夜にひとが通りかかると「あー」と声をかけて来たりする事があるという道で、この声を聴いた次の日には手足にひどいしもやけが出来ると言われています。

かんらいふうし(還雷夫子)
鮫の精霊。立派な君子のような姿に化けて人前に出て来たりしたと言います。

きっつけぢょうちん(切ッ附提灯)
中からパッチリと火のついた附木[つけぎ]を出して来るちょうちんのおばけ。

くさぼけのおばけ(地梨のおばけ)
くさぼけの実がばけたもの。

こうもりくづれ(蝙蝠崩)
山の崖などに急に穴ぼこがあいてへんなこうもりがばらばらわらわら出て来るというもの。

ごこどう(蜈胡同)
部屋の天井近くに夜中になるとぐるりと小人の市場のようなものが現われて、がやがやと声がしてくるというもので、正体はむかで。

こついり(骨烹り)
首から提げた鍋でぐつぐつ骨を煮てるおばけ。

こなべら
池に棲んでるという岩のような甲羅のおばけ虫。「なんべら」の小さいもの。

こめたきじし(爨獅子)
真っ黒い歯のおおきな獅子。染めたお米もスキ。

さかなひき(魚引き)
夢の中で毎日毎日、ふしぎな人たちが魚を引っぱりあってるというもの。あるとき、ついに魚がまっぷたつに割れた夢を見て起きたら、部屋中が魚のくずだらけだったトカ。

さばむぎ(さば麦)
生えてる麦や貯えてる麦の一部分だけが突然にくさくなってしまうというもの。

しいこんしい
椎[しい]の実のおばけ。ひとのような姿に化けて道でごろごろ転がったりします。

じきが
びよんびよん跳ねまわるおばけ。

しのびふで(尻延筆)
古くなって毛がだめになってしまったまま打ち置かれたままの筆が虫に化けたもの。

しひちゅう(漬飛虫)
骨をもりもり食べては青っぽく光る地獄な虫。

しらてんか(白天火)
内側に雷がメカメカと発生しているふしぎな石。

すいかいじん(水海神)
ふだんは背の高いお坊さんの姿で歩いていますが、ごはんを満足にくれた家屋敷などには疫病の流行ることを教えてくれた、らしいです。

すいどくじゃき(水毒邪鬼)
ひとに水にまつわる病気を巻き起こさせる邪鬼。

すすどし
漁師小屋の戸をスーッと勝手に開けたり、屋根板をドシドシと鳴らしたりするというもの。

ぜいろぐへび(ぜいろぐ蛇)
細長いとさかのようなものがついてる黒い大蛇。

せきしゅうおんな(石洲女)
ものすごく細長くて背のたかい女のおばけ。

そおずだおし(案山子倒し)
田畠の案山子を倒しまくっていってしまうもの。

そこうば(鼠甲馬)
壁に住んでる鼠が、ちいさな武人姿になって捨ててある魚の頭とかを獲得していくというもの。

たがねのおおうお(たがねの大魚)
海からたまに打ち上げられたりするという大きな口と歯のふしぎな魚。

たにだれのかい(谷垂怪)
山の中で知らないみちを作ったり出したりしてひとを惑わせたりするふしぎなもの。

たちだらい(立ち盥)
長い足の生えた盥[たらい]がボーっと立ってるというもの。

たでいりがさ(田出入り笠)
鳥追いの姿をしたおばけ。田んぼの中などから巨大な腕を出してひとをびっくりさせたりします。

たべるのおろち(たべるの大蛇)
旅先で出逢った女に土産を買って帰りに寄ると約束したのにそれを破ってしまった男。女はたちまち大蛇の姿に変じて男を追い駆け、呑み込んで食べてしまったんだトカ。

たわらしゃぶり(俵しゃぶり)
炭俵[すみだわら]などをなめるのが大好きなおばけ。だからよだれがねずみいろ。

だんぼらだんべ
舟の上からダボンと何かが落っこちる音をさせて来るもの。

ちどりばしのおばけ(千鳥橋のおばけ)
ものすごく大きな図体をしたぼうふらのおばけ。堀からザバー。

つかのかも(冢の鴨)
野山などに出るもので、居たかと思ったら姿を消したり、また別のところにいたりするふしぎな鴨。古墳に宿ってる霊がこれをやってるんだトカ。

つるせじめ
かなり巨大な体格をした山猫のようなもので、人間のまわりをぐるぐる回ったかと思うとすごい勢いで木などに登って、ひとをびっくりさせす。

どうばりのばけもの(銅張の化物)
四角い銅器のような顔のおばけ。

とどまるかげ(留る影)
遠くから見ると前を行くひとの影、近くに来るとその場で足踏みを続けているひとの影にみえるよくわからないふしぎな影。

とぼねずみ(とぼ鼠)
体のあちこちに太いトゲが生えてる鼠。

とまさじ
海の中に住んでるという三本脚のおばけ。

なんべら
池に棲んでるという岩のような甲羅のおばけ虫。

にわかまど(庭竈)
一年にいっぺん、家の庭にかんたんなかまどを造ってそれをまつり、おもちを焼いたりするというもの。

にわし(荷鷲)
いろんなものを運ぶあの世のおつかい。

ぬまやぐら(沼櫓)
沼の水などにいるというおばけ虫で、「おおにゅうどう」のように大きくなってひとを化かしたりしますトヤラ。

のはしる(野疼痛)
ひとに取り憑いて急な痛みを起こさせるもの。

ばけかやのみ(化榧果)
榧[かや]の実の化けたもの。ひびわれている。

ばけたいさん(化泰山)
泰山木[たいさんぼく]の化けたもの。火を出す。

ばけれいぼう(化冷房)
古くなった冷房器具のおばけ。ぶぶぶぶーん。

はしらずり(柱摺り)
夜おそく、柱の表面をずりずり鳴らすおばけ。

ばらちのへび(茨地蛇)
巨大な大蛇。近くを通りかかったひとの行く手をはばんで、自分の背中に刺さっているトゲを抜かせたりしたといいます。

はんにゃむし(般若虫)
高い智識をもってるというふしぎな虫。とんでもなく高い空を飛んでるソウナ。

ハンバーガーたいこう
(ハンバーガー太閤)
ハンバーガーのおばけ。博覧会の臨時料理から天下の平均食物にまで大出世じゃ。

ひきまどのぞき(引窓覗)
屋根にある引窓をあけて、家の中をジーッとのぞき込んで来るというもの。

ひじしめ
山道などを歩いているひとの体を突然触ってきたりするというおばけで、その感触は熱かったり生あたたかったりするソウナ。

ひつもち(櫃持ち)
大きな石の櫃のようなものをかかえているみすぼらしいおじさんの姿をしたおばけ。

ひのにし(火の螺)
真っ赤なおばけ貝。けちんぼな生態。

ひゃくもり(百聚)
壁の中にいてジャッジャッと音をたてるふしぎなもの。

ひらじきへび(片敷蛇)
頭のまわりにひらひらしたものがたくさんついてるふしぎな蛇。

ふしけづや
はたきをふりふりしてるおばけ。

ふたおい(二背負)
峠道などを歩いてる旅人を、突然ふたりの人間に背負われてしまったような気分にしてあわてさせるおばけ。ほかのひとから見るとその当人は、木の根っこの上などに立ってるダケ。

ふとふ
毛むくじゃらな頭をしてるおばけ。

へちだま(へち魂)
古くなったへちまのおばけ。

べんてんよこののっぺらぼう
(弁天横ののっぺらぼう)
夜あるいてる人に娘姿で近づいて来て、のっぺらぼうな顔でひとをびっくりさせてたもので、正体はむじな。口のある形ののっぺらぼうでした。

ほうれんそうかん(鳳蓮総管)
勇ましいほうれん草のおばけ。

まろざめ(真黒鮫)
海に住んでるという大きな魚で、船にぶち当たって船底を壊したりもすると言います。肉は臭くて食べられない。

みみこ(耳痂)
ひとの耳たぶに黄色い砂つぶのようなかさぶたを発生させる病虫。

みみろく(耳六)
耳がたちまち六ッになったりして、ひとをびっくりさせるおばけ。

むぎちお(麦ちお)
何者かがコゲた麦のようなものをチラチラっと振り散らかしていくというふしぎなもの。

むしだわら(虫俵)
米だわらに足がニョキニョキ生えてぽこぽこ歩き回るというもの。

もんのくび(門の首)
お寺の門などからニューっとくじらのような顔を出して、ひとをびっくりさせるおばけ。

やくじけさん
むかし、弓を射るときに鏃[やじり]で指をけがしたのがモトで討ち死にしてしまった豪族をまつったというもの。

やたらばな(狂劇花)
まったく同じ顔の人間が現われたりするというもの。正体は花の精。

やまおくのあなむし(山奥の穴虫)
山に棲んでる巨大な虫。背中にある松やにのような油は薬になるトカ。

ようかんせい(瑶函精)
大事に保管されていた書簡の精霊。

よつべぼう
夕顔の実のおばけ。上からぶら下がって来てひとをびっくりさせます。四ッひとくみ。

よぎき
顔が半分ずつ別世帯になってるおばけ。かまぼこが好き。

らんまのうす(欄間臼)
夜、部屋の欄間の部分に大きな臼のようなものが急にはさまっているというふしぎなもの。次第々々にふくらんでいったり、気がついたらパッと消えたりしてるんだトカ。

れいせい(鱧精)
鱧[やつめうなぎ]の精。美女に化けて人間を池の中の屋敷に招き込んで生気を奪ったりします。

れじおのぐんちゅう(礼潮の軍虫)
レジオネラ肺炎をまきおこす病虫。消毒されてない生水などに居たりします。

れぶとづすむし(礼太頭籔虫)
病原性レプトスピラのおばけ。ねずみなどのおしっこの中に住んでて、ひとを病気にします。

れんぎょ(瀲魚)
口の中から清らかな水をだぶだぶ放っているというふしぎな魚。

わくちんさま(わく狆さま)
古くなったワクチンのおばけ。頭の先が針。

わしぐも(鷲蜘蛛)
鷲[わし]のようなあたまをもってる蜘蛛[くも]のおばけ。